2024/04/03

革新は小さな一歩から~大企業の枠を超え、起業家へと踏み出す軌跡~「GEMStartup TOKYO」、2023年度の成果報告会を開催しました!

こんにちは!広報担当の古橋です。
毎年3月になると、オフィスはいつも以上に活気に満ちあふれ、成果報告会に向けての期待と熱気が高まります。この成果報告会は、挑戦者の半年間の成果を発表する舞台です。挑戦者の方々は自身の成長を振り返り、その過程を多くの人々と共有することで自信とモチベーションをさらに高めることを目指し、私たちは、その挑戦がまた新たな挑戦を生むような循環の形成を目指しています。
そして、この成果報告会は当社メンバーが1年間に渡り突き進んできた集大成の場でもあります。3月は、最高の成果を収めるために、挑戦者も当社メンバーも特に情熱を傾ける時期なのです。
今年度も多数の成果報告会を実施しましたが、今回はその中でも「新事業発掘プロジェクト(GEMStartup TOKYO)」成果報告会のレポートをシェアします。

 

GEMStartup TOKYO

 東京都より受託し、運営を行っている「GEMStartup TOKYO」は今年度で4年目となる事業で、当社にとって想い入れの強い事業です。
GEMStartup TOKYO の“GEM”は、宝石を指します。企業内に眠っている人材や知財などは、イノベーションの原石であり、そこから生まれるスタートアップがイノベーションを巻き起こし、宝石のように輝くよう期待を込めた名称です。
本事業では、新事業が日の目をみるために新事業創出に主体的に取り組む人材創出、起業の組織制度や組織風土の改革を後押ししてきました。

「GEMStartup TOKYO」が生まれた背景

アメリカや中国、ヨーロッパではユニコーン企業が次々と生まれている中、大企業が経済を牽引し、安心・安全・安定が重視されてきた日本社会ではなかなかユニコーン企業が誕生していません。本事業が始まった2020年、カーブアウト事例も少数でした。優秀な人材が集まる大企業に眠るアイデアを掘り起し、日本流の経済発展を遂げるべく、GEMStartup TOKYOは生まれました。安心・安全・安定が保障されているからこそ、失敗を恐れてしまう大企業。新事業立ち上げの動きは様々な企業で生まれているものの、新事業が日の目を見る前に社内で潰されてしまうことも少なくありません。
私たちは、事業の意思決定を早くし、スピード感をもって成長させていくことが重要だと考え、その環境を創り出せるカーブアウトを創出すべく、当事業に取り組んでいます。

「GEMStartup TOKYO」 の取組み

本事業は、民間企業に潜在する優れたアイデア・シーズを活かすことで、イノベーションを巻き起こすスタートアップの輩出を目的としています。一般的なアクセラレーションプログラムとは異なり、事業のアイデアをもつ挑戦者に対する支援のみならず、挑戦者を支える事務局の支援も行っています。事務局は挑戦者が新事業で成果創出をしやすい環境を作るため、役員への働きかけや社内制度の見直し、知財関連の問題解決のサポート等を担っています。私たちは、新事業を推進していく挑戦者、社内環境を整備し、挑戦者を支える事務局の盤石な体制がそろうことで、企業からの新事業創出が実現すると考えています。

 GEMStartup TOKYO 2023年度成果報告会

 2024年3月14日(木)、GEMStartup TOKYOの2023年度成果報告会を開催しました。3部構成で、第1部では先輩起業家の講演、第2部では本プログラム採択者による成果報告、第3部では本プログラム採択企業によるパネルディスカッションを行いました。

先輩起業家の講演:「個の信念が新事業を創る ~清水建設からのカーブアウト企業『プロパティデータバンク』の軌跡~」

第一部では先輩起業家による講演として、プロパティデータバンク株式会社 代表取締役会長 板谷敏正さんにご登壇いただきました。
板谷さんは、1989年に清水建設株式会社入社。エンジニアリング事業部門にて活躍後、2000年に同社社内起業家公募制度を活用しプロパティデータバンク株式会社を設立。不動産管理向けクラウドサービス「@プロパティ」を開発・リリース。 2018年に東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)への上場を果たされています。

板谷さんの講演の様子

「個の信念が新事業を創る」をテーマに、個人の信念がいかにして新規事業を創出し、業界の潮流を変え得るかについてお話いただきました。
板谷さんは自身の経験を通じて、高い理想と革新的ビジネスモデルに裏打ちされた独創性が、プロパティデータバンクの根底にある「信念」であることを繰り返し強調されました。この信念は、1990年代後半、建設業でのキャリアを経て、不動産業界におけるIT革新の可能性を見出したときから、板谷さんの中では芽生えていたそうです。そして2000年、社内起業家として不動産業界において革新的なITソリューションを導入し、従来の不動産資産管理方法を根本から変革しようというビジョンを実現するためにプロパティデータバンクを設立されました。不動産資産管理向けクラウドサービス「@プロパティ」は、従来の不動産管理方法に革命をもたらすことになります。
講演の中で板谷さんが語ったのは、ただアイデアがあるだけでなく、「このビジネスは社会にとって必要だ」という強固な信念が成功の鍵であることを強調しました。その信念は、新市場へのカーブアウト、つまり既存の安定した市場から離れて、未踏の領域に挑戦する意思決定を可能にするのです。
板谷さんにとって、プロパティデータバンクの立ち上げは単なるビジネスチャンスではなく、不動産業界における永続的な価値を創出する機会でした。「個の信念が新事業を創る」精神は、プロパティデータバンクが直面した多くの挑戦や競争の中でもブレることなく、革新を推し進める確固たる原動力となったということを板谷さんは教えてくれました。

挑戦者による成果報告:株式会社セガ エックスディー・株式会社ホスピタリティ・ワン・株式会社omniheal

いよいよここからは、今年度採択者、“挑戦者”による成果報告です。今年度、全20プロジェクトが当事業で採択されました。内4プロジェクトより、その成果に関してプレゼンテーションを行っていただきました。
トップバッターは、株式会社セガ エックスディーの片山智弘さん、株式会社ホスピタリティ・ワンの高丸慶さん、株式会社omniheal石井洋介さんです。

異なる3社によるこの連合チームは、“介護福祉エンタテインメント“という、新たなマーケットを切り拓きました。
着目したのは、介護業界において深刻視されている様々な課題です。人材不足や労働環境の困難さが社会的に問題とされている一方で、介護の現場ではそんな状況下でも入居者の満足度向上を図っていく必要がある。正に介護業界に身を置く方々は大きなジレンマに苛まれていると言えます。
このような課題を抱える介護の現場に、エンタテインメントコンテンツを投入することで、入居者のより豊かで尊厳ある生活への貢献と、施設の差別化・ブランド価値向上が図れるのではないかと提案を投げかけたのが、片山さんたちでした。
GEMStartup TOKYOにおける具体的な取り組みとしては、介護施設でのユーザーインタビュー調査、運用設計の基礎構築、テストプレイ実施などが挙げられ、検証プロセスを経て、実際の施設でのサービス提供に至りました。レクリエーションなどの施設活動を通じて、入居者やスタッフからの直接的なフィードバックを得ることができ、事業の方向性を確かなものにしたといいます。さらにGEMStartup TOKYOでは、ミッションの重要性や適切な事業意思決定のための優先順位設定、双方の期待値管理がいかに大切かを学ぶことができたとお話しいただきました。
プロジェクトの成果としては、オリジナルコンテンツで実際に介護・福祉領域における課題に応えるようなエンタメを3つ開発することができました。「やっぱり GEMStartup TOKYOの支援があったからこそ。たくさん作れました。」と片山さんは語ってくれました。
3人は、エンタテインメントと介護福祉という異なる二つの世界を繋ぐ新たなビジネスモデルを創出し、その可能性を大いに示しました。今後は、「株式会社エンタケア研究所」として事業をカーブアウトさせ、尊厳あるケアとエンタテインメントの融合を進め、業界全体の変革を促進することを目指してゆきます。
(片山さんたちのオリジナルコンテンツに関するプレスリリースはこちら

挑戦者による成果報告:株式会社朝日新聞社

つづいて、朝日新聞社の宮崎勇作さんと植田佳典さんです。「全てのアスリートを主役に」と掲げるお二人には中学生のお子さまがいて、子どもたちのスポーツを見るのが大好き!そんなお二人が生み出した新規事業が、お二人らしい、愛情いっぱいの事業でした。

 朝日新聞社の宮崎さんと植田さんは、アマチュアスポーツの魅力をもっと広く伝えるために、AIカメラ技術を活用した新たな事業をつくりました。
この新たなアイデアの背景にあるのは、地方のスポーツ大会が配信されず、アスリートの活躍を幅広く共有する機会が限られてしまっているという実情です。経済的価値やマネタイズの可能性が低いと見なされがちなアマチュアスポーツに対する認識を変え、視聴者がどこにいてもアクセスできるプラットフォームを創出したい、そんな想いからこの事業は生まれました。
この課題に対するソリューションは、イスラエルのスタートアップによって開発されたAIカメラで、これを使って大会ごとに視聴可能な配信プラットフォームを構築。1日に100試合以上も撮影可能というこの技術により、1ヶ月間のサブスクリプションモデルで、低コストで広範囲のスポーツイベントの配信が可能になったのです。
宮崎さんと植田さんは、GEMStartup TOKYOで徹底的なユーザーインタビューを実施。初期の想定とは異なるユーザー層がサービスに強いニーズを持っていることを発見しました。特に指導者やチーム自体が主な利用者であることが明らかになり、サービスの方向性を再検討するに至ります。さらに地方大会のライブ配信を提供する新しいビジネスモデルを構築し、プラットフォームの拡大も計画することになります。
現在は、全国の地方大会の準々決勝以上をライブ配信することを目標に、5年後には4万人の加盟者を獲得することを目指しています。一方で、今後の成長には資金と人材の確保が必要であることが明確に分かっているため、カーブアウトを含む様々な選択肢を検討しており、GEMStartup TOKYOから得たインサイトや共創の精神を活かして、新たな課題を乗り越えていこうとしています。
宮崎さんと植田さんの挑戦が引き続きスポーツ愛好家やアスリートの家族にとって価値の高いサービスとなってゆくことを応援しています!

挑戦者による成果報告:小田急電鉄株式会社

小田急電鉄の板谷拓人さんは、登山道維持管理のDX事業を通じて、自然と向き合い、持続可能な社会基盤を創出する新規事業について発表をされました。板谷さんのプロジェクトは、板谷さん自身、登山がだいすき!という想いから生まれています。どれ程好きかというと、1カ月会社を休んで登山に行っちゃうくらい。しかしその経験の中で、今まで歩いてきた道がどんどんなくなってきていることに板谷さんは気が付きます。板谷さんは過去の体験から、登山道の維持が困難になっている現状を認識し、この問題に対処する必要性を感じました。登山道が段々と使えなくなっていること、約2割の登山道が既に使えなくなっており、そのうち約7割は復旧見込みがないという統計は、アクションを起こす重要なキッカケとなりました。これは単に観光の問題ではなく、防災の観点からも非常に重要なことであると板谷さんは強調します。この問題に対する板谷さんのソリューションは、スマートフォンを活用した損傷調査です。これにより、誰でも簡単に損傷状態を記録し、共有することが可能になり、調査員の不足問題も解決できるようになります。スマートフォンのライダーセンサーを用いて撮影することで、定量的なデータを収集し、調査の効率化を図ります。この新しい損傷調査方法の運用によって、損傷箇所の即時共有が可能になり、現場の状況をリアルタイムで把握することができるようになります。これにより、登山道の管理が従来よりもはるかに効率的かつ迅速になることが期待されます。小田急電鉄の板谷さんによるこの事業は、都道府県庁の協力の下で二度のPoC(Proof of Concept)を実施し、その結果、顧客(ここでは、都道府県庁)の抱える課題を解決する能力が実証されました。板谷さんは、「顧客の課題に刺さるものでない事業は作る意味がないと思っています」といいます。顧客との綿密な連携を通じて、リアルなニーズに応える事業開発に引き続き注力していくと語りました。ビジネスモデルでは、初期にターゲットとして設定した顧客層から年間利用料を収集することを計画しており、すでに9つの団体から有償化に向けた進展があったそうです。板谷さんは、“失敗を恐れずにチャレンジする”という、GEMStartup TOKYOで学んだ姿勢で事業を拡大していくと力強く話されました。

挑戦者による成果報告:株式会社オカムラ

いよいよ最後の発表者。最後は株式会社オカムラの深野竜志さんによる発表です。

株式会社オカムラの深野さんは、無人ケースプラットフォーム事業を通じて、”心惹かれるモノとの架け橋”を築き、買い手と作り手の両者に豊かな経験を提供することを目指しています。
深野さんが掲げるミッションは、特に個々の商品や地域の独自性を持つ特産品など、紹介したい商品が都市部では手に入りにくいという課題からきています。
作り手は自社の商品を知ってもらいたい気持ちを強く持っていますが、主流のECサイトや通常の小売店では、商品が埋もれてしまい見つけることが難しいという問題があります。この問題に対する解決策として、深野さんは、サブスク型の無人販売サービスを提供し、商品と買い手の新たな接点を生み出します。無人ケースは、コストや労力の削減、接点の増加、そして労働力不足の解消など、複数の問題に対処することができます。商品の陳列支援やマーケティング情報提供などのサービスを通じて、買い手と作り手の両方にとって魅力的な場を提供することを実現させます。
ビジネスモデルにおいては、初期の展開対象として、都心の23区のオフィスを対象としており、目標は9378棟のオフィスのうち5%をカバーし、5年後には約14億円以上の売上を見込んでいるとのこと。さらに、佐賀県庁の協力のもと、コワーキングスペースのカフェエリアで実証実験(PoC)を実施し、商品販売だけでなく、商品を通じたコミュニケーション促進や地域の魅力発信の効果も検証していく予定です。
GEMStartup TOKYOへの参加を通じて、深野さんは新たな市場開拓の使命を再確認し、人とのつながりから生まれる新しい解決策に焦点を当てる重要性を学んだと話してくださいました。

採択企業事務局によるパネルディスカッション:小田急電鉄株式会社・株式会社オカムラ

第三部では、当社代表の室岡がファシリテーターを務め、各社事務局の皆さんとパネルディスカッションを実施しました。パネラーには小田急電鉄株式会社事務局の久富雅史さんと、株式会社オカムラ事務局の佐藤直史さんにご登壇いただき、新規事業を進める上での挑戦と、それを支える組織文化に焦点を当てながら議論を展開していただきました。
小田急電鉄の久富さんは、イノベーションマネジメントに関して、人口減少や高齢化といった社会課題対策へのアプローチとして立ち上げ、課題解決型の新規事業創出を目指していると話されました。さらに社員からのアイデア募集や、社外との連携を含めた多岐にわたる取り組みも紹介されました。このプロセスでは、新規事業の発案から実装に至るまで、風通しの良いゲート管理と役員の審査を通じて進行しているとのことでした。
一方で、オカムラの佐藤さんは同社の比較的新しい取り組みを紹介し、新規事業立ち上げにおけるチャレンジの積極性と、そこから生じる組織文化の変容への期待を語ってくださいました。特に、挑戦を恐れず、失敗を許容する文化の醸成が重要であるとし、新規事業部門の設立がそうした文化変革のきっかけとなることを示唆されました。
パネルディスカッションでは、「心理的安全性」という概念が繰り返し話題に上がり、新しいアイデアや挑戦を促進するために安心して失敗ができる環境の重要性が特に強調されました。
最後にお二人は、新規事業プログラムや挑戦者のサポートを通じて、個々の社員が自分のキャリアを自ら切り開き、成長する機会を作ることの価値に言及しました。そして、そのプロセスが最終的には会社全体の文化を変え、さらなるイノベーションを促す土壌を育むことに繋がると、確信を持ってお話してくださいました。

まとめ

ここまで読んでくださったみなさま、本当にありがとうございます。もっと短く編集しようかと悩んだのですが、発表者の方々の挑戦の物語をコンパクトに収めるのは至難の業でした。ここに記した、2023年度 GEMStartup TOKYOの挑戦者の物語が新たに挑戦をはじめようとしている方の背中を少しでも押すことができれば幸いです。

「挑戦者がその挑戦を言語化する前に、挑戦を諦めさせようとする力が大企業には存在している。だから大企業での新規事業は難しい。」当社代表の室岡は言います。
重要なのは、その人にストーリーをもたらすこと、その人が続ける理由をもたらすこと、そして大企業からの新規事業という意味では、その環境をいかに戦略的に作り上げるか、ここに焦点を当てることがとても大切です。
そして、市場に出てフィードバックを受け入れる勇気。時には厳しい批評に直面し、力を落とすこともあるかもしれない。でもそれこそが成長のプロセスであり、挑戦を続ける理由になり得る。わたしたちボーンレックスはそんな風に考えています。

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