2024/04/09

困難に直面した起業家たちの再起をかけた情熱を体感!「TOKYO Re:STARTER」2023年度の再挑戦プログラム 成果報告会を開催しました!【後編】

こんにちは!広報の古橋です。
「困難に直面した起業家たちの再起をかえた情熱を体感!「TOKYO Re:STARTER」2023年度の再挑戦プログラム 成果報告会」レポート後編です。後編では、23年度に採択された20名の挑戦者のうち、5名の方に発表をいただいた内容をまとめました。
失敗を嫌う日本に、不屈な精神で突き進み成功を得た挑戦者たちの物語を是非ご確認ください!

 

諦めない力

2023年度、TOKYO Re:STARTERには20名の挑戦者がプログラムに参加しました。スポーツでも習い事でも失敗のない成功などあり得ません。起業だってそう。「失敗は成功の素」だなんて言うけど、上手くいったものですよね。
だけど、それなのに何故、社会において失敗は受け入れられないのでしょうか。失敗した人は報われないのでしょうか。
いいえ、そんなことは絶対にあり得ません。20名の起業家がその背中で教えてくれます。

成果報告会の第二部では、過去の経験と、そこから得た学び、TOKYO Re:STARTERを通じて得られた変化や成長、そして現在挑戦している新規事業について、23年度に採択された20名のうち、5名の方に発表いただきました。
5名の発表から滲み見えてきたのは、失敗に屈しない強い気持ちと、絶対に諦めない心でした。

都市鉱山を活用した独自の回収システムにより資源の循環型プラットフォームを提供

木部剛さんは、トラッシュテクノロジーズ株式会社の立ち上げとともに、自身の過去の失敗からの再起、そして難題に直面しながらも新しい挑戦を続け、著しい進展を遂げるまでの過程で、過去を振り返ることの大切さを深く理解したといいます。独立して5年後に自身の経験不足が原因で会社が休眠状態になった時、何が間違っていたのか、そしてどうすればより良い方向へ進むことができるのかを、はじめて深く考えたことを教えてくれました。
過去を顧みることは木部さんにとって、失敗を受け入れ、学び、成長する過程でもあったといえます。

木部さんの事業のミッションは、「資源循環を変えることで世界をより良くする」ことで、都市鉱山領域で廃棄物の再資源化を促進するプラットフォームを開発するビジネスを展開しています。電子廃棄物のリサイクル率が低いという課題に取り組み、デジタル技術を活用したトレーサビリティシステムや再資源化の見える化、DX化を推進しています。将来的には工場を持ち、グローバル展開を視野に入れているそうです。
「半年前、こんな風にピッチを行うことができるとは思ってもいなかった」木部さんははじめに言います。正に大逆転劇ともいえる半年でした。
木部さんはこのプログラムの中で、1000万円の資金調達と、ビジネスモデルの検証と実現化、そして3社との事業提携の3つ目標を立てます。そしてその結果、現在は4人のチームメンバーを持ち、協業先5社や見込み顧客4社との関係を築き上げたというのです・・!資金調達に関しては、なんと今月末にエンジェル投資家より1000万円の調達が決定しており、さらにVCからも3000万円の調達の話が最終の交渉の段階だと話されました。
半年前、ピッチを行うことができるとは思ってもいなかった木部さんが、今や1000万円以上の資金調達を達成し、さらにグローバル展開を見据えるまでに成長している。そして何よりこの成功物語はたったの6カ月で作り上げられている。本当にすごいことだと思いませんか?
木部さんは、プログラムを通して、メンター・仲間が存在することの大切さと、とりあえずやってみる勇気、そして考えることから逃げないこととその言語の大切さを学んだと教えてくれました。

医療現場のアナログ作業を短縮し、患者に向き合う時間を増やすSaaSを提供

株式会社Emyuの安藤美恵さんは、動物病院勤務の経験をいかし、複数のペット関連事業を立ち上げるも、キャッシュフローが悪化。 この難局に直面した際、安藤さんは深く過去の己と向き合うことを通じて自己の判断とアプローチを見直し、顧客が本当に必要としてくれる部分に特化するという大きな決断をします。安藤さんは、動物との共生を促進する事業に強い想いを掛けており、動物と人がもっと一緒に暮らしやすくなる世界を実現するために、自身の過去の失敗を振り返り、どのようにして顧客のニーズに応えられるかを考え抜いたといいます。

安藤さんは、動物との共生を促進する事業に強い想いを掛けています。動物と人がもっと一緒に暮らしやすくなる世界を実現するために、動物病院の医療サービスの改善と飼い主とのコミュニケーションの向上を目指し、データベースの構築を進めています。具体的には、電子カルテの活用により、飼い主と動物病院の間の情報共有をスムーズにし、ペットの医療サービスの利便性向上を図っています。これにより、飼い主とペットの暮らしをより快適にするだけでなく、動物病院の効率化にもつながってゆきます。また、飼い主がペットの健康情報を手軽に管理できるため、予防接種や定期健診の管理も容易になり、ペットの健康管理がより継続的に行われることが期待されるということです。
安藤さんはプログラムを通じて、自身のビジネスモデルを検証し、資金調達や事業提携を実現するなど目標を達成しました。この経験により、いままで持つことのできなかった確固たる自信を持ち、次のステップに進む力を得たと語ります。安藤さんは、これまでは理想の自分や、誰が見てもわかるような成功と今の自分を比較してその差を見ては落ち込んでいたと話してくれました。でもプログラムに参加してからは、1週間前の自分と、1週間でやった行動、そして今日の私との変化に着目するようになったそうです。このことが、大きく視点を変えたと安藤さんは言います。TOKYO Re:STARTERを通じて新たな視点やアプローチを学び、自身のアイデアをより具体的に展開することに成功した安藤さん。安藤さんの取り組みは、動物と人の共生を促進するだけでなく、新たな市場を切り拓いているといえるのではないでしょうか。安藤さんの想いの実現は、挑戦と努力が報われることを示していると感じずにはいられませんでした。

末期がん患者向けにクスリを使わない新たな治療法と意識を保つ緩和ケア療法を提供

田中武雄さんは過去に、自身の研究をもとにナノ粒子を用いた新しいがん治療法の事業を立ち上げる道を選び、計6億円もの資金調達を達成しましたが、実用化までのハードルが高くやむなく事業解散を決断した経験があります。プログラムに参加して、田中さんがまずやったことは「過去を振り返ること」の時間を持つことだったといいます。自身のミッションと取り組むべき方向性について深く考え、「がん難民」を助けるという元々の動機を再確認しつつも、ラボの再構築と資金調達を進め、ナノ粒子の技術を活かした新たな市場の開拓を目指す決断をすることになります。

かつてはがん治療のみに焦点を当てたことに深く反省を感じた田中さんは、プログラムを通じてビジネスの在り方に対して柔軟性を持った考え方に変化しました。特に奥様ががん難民だったことから、がん治療にこだわりすぎていたことに気づいたといいます。しかし今ではがん治療だけではなく、「人類の健康と美に貢献する」を新たなミッションに掲げ、コスメやサプリなどに技術を応用する方法を模索し、その影響の幅を拡張し続けています。
田中さんがこのように大きくビジネスモデルを変えるに至ったドライビングフォース(突き動かしたもの)は、プログラムを通して、焦点の狭さや柔軟性の欠如を認識したこと、がん患者の方々から励ましの言葉を直接いただいたこと、最良のビジネスパートナーに出会えたこと、そして、不完全燃焼が続く田中さんに対してメンターの強めの叱咤激励があったことだと話してくれました。
田中さんのこれまでのストーリーは、挫折や困難に直面しながらも、柔軟性を持ってビジネスの方向性を変え成長し続ける姿を示していると感じます。田中さんの経験は、成功の道は直線ではなく、時には曲がりくねり、変化に対応し、学びながら進むことが重要であることを示しているように思います。

産業が抱える社会問題解決と、産業の活性化を図るサービスを提供

Airera株式会社 清水広大さんは、過去にスーツのオーダーメイド事業を立ち上げるも、コロナ禍で売上が低迷し、倒産。小ロット生産の需要はさらに顕在化しており、どのようにしてその生産体制を確立するかが最大の課題であるため、実証実験を通して、事業の実現化、サービスのリリースを目指しています。

清水さんは、1着から作るアパレル製品の生産の仕組みにフォーカスし、在庫管理や生産プロセスの効率化によって業界にイノベーションをもたらすことを目指しています。これの実現のために、受注生産型のシステムを構築し、売れた分だけ商品を製造する仕組みを導入しています。このことによって、在庫管理の負担を軽減し、商品開発と集客に集中できる環境を創出。さらに縫製工場の生産プロセスを自動化することで、小ロットの生産にも対応していきます。ビジネスの展望としては、BtoB取引やECサイトサービスの提供、サプライヤーとの連携など、幅広い分野での展開を計画しています。この展望の先には、業界全体の活性化や環境負荷の軽減に繋がっていくことが期待されています。
清水さんは 、倒産の経験からトラウマで自分に制限を掛けてしまっている状態でしたが、プログラムを通して、自分と確実に向き合うことで過去の失敗や不安を克服し、ビジネスを成功させるための決意を新たにできたと語っています。それまでは得意だった営業などにも自信が持てず、なかなか一歩が踏み出せなかったといいます。さらに、プログラム参加者同士の交流やフィードバックを通じて自身のビジネスに対する見識が深まったと教えてくれました。「これから先もTOKYO Re:STARTERで出会った仲間とは繋がりつづけたい」という言葉がとても印象的でした。
現在は、6人のメンバーと共に国内外での展開を進めています。「この事業のゴールは、やるなら経営者としての最低を経験したので、最高を経験をしたい。私の言う最高峰のIPOを目指したいです。」と力強く語ってくれました。

写さない見守りカメラで日常生活動作デジタルデータ化プラットフォームを提供

株式会社きづなろ 大槻和史さんは、高齢者見守りAIで起業したものの、市販の装置を活用したサービスに限界に。独自装置の開発を目指し、クラウドファンディングを行うも資金調達が叶わず失敗という苦い経験をしました。この挫折を胸に、大槻さんは自身を顧みる時間を持ち、何が失敗の原因だったのか深く考えました。長い開発経験で培った人脈を生かして独自の装置とAIのコラボの社会実装を目指し、再度チャレンジへの糸口を見つけました。

大槻さんは長年AI研究をされており、人の姿勢を判定するシステムを開発することに焦点を当てていました。そんな中、ある事故が大槻さんの人生に影響を与えます。大槻さんのお母さまが自宅で転倒してしまったのです。類似のケースを想定して開発した安全装置が役に立たなかったこと、しかも大槻さん自身もその事故に気付けなかったが大きなショックを与えたのです。この出来事から大槻さんは、離れた親族や単独で生活している高齢者の見守りが絶対的に必要だ、という問題に着目します。しかし適切な機能や価格設定が不明瞭であること、プライバシーへの懸念、そして手間の問題がハードルとして大槻さんの前に立ちふさがります。
大槻さんは、これらの問題に対処するために、プライバシーを守りながら高精度の見守りシステムを開発することを決意。助成金を資金に、市販のパソコンとカメラを使用して低コストで実現可能なシステムを開発するのです。
しかし、商品としての売り上げは振るわなかった。その時はじめて、自身のビジネスに愛着がないことに気付いたといいます。その後、大槻さんは再びチャレンジし、プライバシーを尊重しながらもより使いやすく、実用的な見守りシステムの開発を実現させたのです。
今後は、転倒検知だけでなく、自立支援や介護予防にも焦点を当てたビジネスを展開していきたいといいます。そして最終的には、世界市場での展開を目指してゆきたいと語ってくれました。
大槻さんは、プログラムを通して「情熱・勇気・行動」が自分を大きく奮い立たせたといいます。自らを「進撃のじじい」と称し(笑)、とにかく突き進む。展示会やフェスには積極的に出て行ったといいます。いちばん臆病になっていた投資家へのピッチにもメンターに強く背中を押されチャレンジできたといいます。しかも出たピッチが普通じゃない。News Picksの人気コンテンツ「メイクマネーサバイブ」に出演されたのです。しかもそこで見事、エンジェル投資家からの融資を取り付けることに成功するのです。
大槻さんの、初めての試みに臆することなく挑戦し、結果的に大きな成果を上げたその姿勢は、見守りシステム開発だけでなく、どんな分野においても成功の鍵といえるのではないでしょうか。

まとめ

「非常に大きな達成だと考えている。」2023年4月、民間初の月面着陸を目指した日本のスタートアップは、着陸失敗後の記者会見でこう語りました。世界の誰もやったことがないことに挑戦する心意気。失敗を冷静に受け止め分析、そしてそれを評価する姿勢にわたしは強く胸を打たれました。この過去を振り返り、次にいかしていくプロセスこそ、挑戦の神髄を映し出していると思うのです。
確かに、かつては、手堅く失敗しない人材が日本の発展を牽引した時代があったと思います。でも現代はどうでしょうか。パンデミックや戦争、超高速技術革新が起こる時代。先が読めない時代において、“失敗はあり得ない”なんてあり得るのでしょうか。わたしたちは、失敗を恐れずに、大いに挑戦をしてゆくべきではないでしょうか。
「失敗は成功の道です」第一部で講演をしてくださった坂田さんは力強く教えてくれました。
月に挑んだ日本のスタートアップや、坂田さん。そして、このTOKYO Re:STARTERで成功ストーリーを紡いできたすべての挑戦者は、失敗という経験を通じて自らの内面を見つめ直し、その成長を止めません。彼らのストーリーからは、失敗を失敗のままにせず、そこから克服すべきことを洗い出し、確実に自身の成長へ結びつけていくことの大切がとてもよく伝わってきました。
失敗から立ち上がってきた先人たちが、失敗を許さない日本に変化の兆しをもたらし始めています。日本はもっともっと豊かになれる。そんなさわやかな期待を抱かずにはいられないのです。

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